デスクリサーチ(二次調査)は、すでに手元にある情報や公開されているエビデンスから始まります。これには、公開された研究論文、公的統計、社内の過去の調査、運用ログ、あるいは今回のプロジェクト着手前に集められた資料などが含まれます。その目的は、すでにわかっていることを整理し、どこに重要な情報ギャップがあるのかを明らかにすることです。
Nielsen Norman Groupによるデスクリサーチの入門記事では、課題の背景や過去の取り組みを理解するうえでの役割が解説されています。一次調査(プライマリリサーチ)との違いは、データの出所と用途にあり、どちらが質的に優れているかという序列の話ではありません。
明確な問いに対する答えを探す
たとえば、自宅での修理・メンテナンスを手配するユーザー向けサービスを検討しているとしましょう。初期の調査では、組織内のサポート履歴とあわせて、日程調整、住居への立ち入り、信頼性、決済などに関する既存の資料を確認することになります。ここで「訪問日時に合わせて在宅・準備することを阻んでいる要因は何か?」といった具体的な問いを立てると、漠然と業界トレンドを追うよりも、はるかに有意義なリサーチができます。
情報源や検索キーワードは記録に残し、重要な主張については一次情報となるエビデンスまで遡って確認しましょう。同じアンケート調査を引用している記事が複数あったとしても、それは1つの情報源にすぎず、複数の独立した裏付けとは言えません。
社内資料も、公開された文献と同じ厳しさで見直す必要があります。過去の調査がそのまま役立つこともあれば、現在の意思決定とは対象ユーザーやプロダクトのバージョンが異なっている場合もあります。
信頼性だけでなく、現在の課題への適合度も見極める
その資料が「誰によって」「なぜ」「いつ」「どのような手法で」作成されたのかを確認します。数値や結論をそのまま受け入れる前に、調査対象、定義、設問内容、制約事項を精査しましょう。
先ほどの修理サービスの例で言えば、不動産管理者向けアンケートの結果は、住居への立ち入りを手配する入居者側の実体験とはズレがあるかもしれません。ただ、その前提の違いを意識して扱えば、十分に参考になります。また、全国規模の推計データは全体像の把握には役立ちますが、個別の予約プロセスの改善にはあまり直結しないこともあります。
「問題がある証拠が見当たらないこと」と、「問題が存在しないという証拠」を混同してはいけません。サポート履歴にログがないのは、ユーザーが問い合わせをしなかったからかもしれないですし、そもそも該当するカテゴリーで記録されていなかっただけかもしれません。
リサーチ結果を、次の具体的なアクションにつなげる
エビデンスから何が言えるのか、情報源によって意見が分かれている点はどこか、そして何がまだ分かっていないのかをまとめましょう。過去の調査アーカイブに関連資料が眠っている場合は、インサイトマイニングが役立ちます。
このリサーチだけで次の意思決定に十分なこともあります。もし追加の調査が必要なら、まだ足りていない対象者やコンテキスト、詳細な論点を絞り込むことで、一次調査をよりシャープに進められるようになります。参照元のリンクや検索した範囲を残しておけば、他のメンバーも結論だけでなく、どの範囲まで検証されたのかを正しく把握できます。
