プロダクトに関する新しい問いが浮かんでも、必ずしもゼロからリサーチを始める必要はありません。過去のインタビューやサポートへの問い合わせ、アンケートの自由記述、過去の調査レポートなどに、すでに有用な情報が含まれていることも多いからです。そうした既存の素材から、今向き合っている問いに役立つ手がかりを探し出し、分析する作業を「インサイトマイニング」と呼びます。
これは決まりきった特定の手法というよりは、リサーチの実践アプローチを指す言葉です。そのため、どのような素材を対象にするか、どう検索するか、そして元々の文脈を切り離さずに結論へとつなげられているかによって、その質は大きく左右されます。
検索を始める前に問いを定義する
「おもしろいフィードバックを見つける」といった曖昧なテーマでは、説得力があるように見えても明確な意思決定につながらないコメント集になりがちです。「管理者が同僚の招待を先延ばしにする理由について、すでに何がわかっているか?」のように設定すれば、探索の範囲が明確になります。
まずは関連する情報源と期間を定めた上で、ひとつのキーワードにとらわれずに探していきましょう。同僚を招待する行為ひとつとっても、「ユーザーの追加」「アクセスの共有」「チームの作成」「参加の依頼」など、表現は人によってさまざまです。リサーチ素材を読み解きながらユーザーがどう表現しているかを掴み、検索ワードを柔軟に広げていく必要があります。
BallparkのCoachのドキュメントでは、既存の調査素材の分析をサポートする機能について解説しています。自動検索を使えば該当箇所をすばやく見つけられますが、関連するすべての記録がシステム上で網羅されているとは思い込まず、得られた回答の情報源や適用範囲をしっかり確認することが大切です。
それぞれの声が生まれた背景を読み解く
オンボーディングインタビューの中でふと出た価格への言及と、料金に関する直接の質問への回答とでは、文脈がまったく異なります。また、サポートチケットに届いた意見は「サポートに連絡してきた人」の声に過ぎず、声を上げなかったユーザーは同じ課題を別の形で捉えていたか、そもそも問題と感じていなかった可能性もあります。
たとえば、招待の遅れに関する意見が何件も見つかったとしても、それが厳しい承認ポリシーを持つ1社から出たものであるケースもあります。そうした背景を見失わないようにしましょう。出どころを確認せずに言及の数だけを数えてしまうと、一部の限定的な制約を、あたかも全体のニーズであるかのように見誤ってしまいます。
複数の素材を横断して解釈する必要がある場合は、テーマ分析(Thematic Analysis)などの適切なアプローチを活用しましょう。検索によってエビデンスの候補が見つかり、分析によってその意味や意見の一致点・相違点が明らかになります。
既存のエビデンスで十分かどうかを見極める
既存のアーカイブだけでピンポイントな問いに十分答えられることもあれば、有益な足がかりにはなるものの、対象ユーザーやプロダクトのバージョン、詳細さが不足していることもあります。何が足りていないのかを明確にしておくことで、次のリサーチで検証すべきポイントがはっきりします。
質の高いアウトプットとは、根拠のあるファクト、確度の高い解釈、そして未解決の問いがしっかりと整理されているものです。元の調査結果へのリンクを残し、参照できなかった重要な情報源も含めて検索のカバー範囲を明記しておきましょう。そうすることで、次のリサーチャーもこれまでの検討内容を踏まえた上で作業を進められるようになり、組織としてのナレッジマネジメントの強化にもつながります。
