行動デザイン(行動設計)は、人が「やろうとしていること」を出発点とし、何がその行動を起こしやすく、あるいは起こしにくくしているのかを掘り下げるアプローチです。プロダクトに必要な機能が備わっていても、それを取り巻く体験が不便だったり、分かりにくかったり、タイミングが悪かったりすることがあります。
たとえば、経費精算のリマインダーを送ったところで、領収書が見当たらないことや、誰も理解していない承認フローといった根本的な問題は解決しません。デザインにおける問いは、単に「リマインダーをより説得力のある文面にする」ことにとどまらないのです。
行動とその背景にある状況を定義する
誰が、いつ、どのような目的で、何ができるようになるべきかを具体化しましょう。「エンゲージメントを高める」では曖昧すぎます。「毎月の締め切り前に、従業員が不備のない経費申請を完了できるようにする」と定義することで、調査すべき具体的な体験が見えてきます。
フォッグ式消費者行動モデル(Fogg Behavior Model)は、動機・能力・きっかけ(プロンプト)の3つの要素から行動を捉えるフレームワークです。論点を整理するのには役立ちますが、特定のユーザー層に関する事実の代わりになるわけではなく、提案した施策が機能することを保証してくれるわけでもありません。
制約となっている要因を突き止めるには、コンテキスト調査や直近の出来事についてのインタビューを活用しましょう。先ほどの経費の例でいえば、領収書がさまざまなルートで届くせいで申請が遅れているのかもしれません。通知の言い回しを工夫するよりも、領収書の回収プロセスを見直すことのほうが効果的な場合もあります。
仮説を検証する
その変更によってなぜ課題が解決されるのか、想定されるメカニズムを書き出してみましょう。「出張直後に送るリマインダー」「必要書類のより明確な説明」「デフォルトのカテゴリ設定」などは、それぞれ異なる要因にアプローチするものです。それらを一括りのリニューアルとしてテストしてしまうと、どの仕組みが功を奏したのかが見えにくくなります(もちろん、実務上のゴールとして体験全体を評価することが目的の場合もあります)。
A/Bテストは、設計とサンプル数が検証したい問いに適していれば、定量的な比較を行うのに有効です。一方で、完了率といった指標だけでは見落とされがちな誤解やプレッシャー、ユーザー独自の回避策などを明らかにするには、定性調査が力を発揮します。
目先の行動だけでなく、その先まで目を向けましょう。申請件数が増えたとしても、ミスが増えたり、承認者の負担が増えたり、十分に見直されないまま申請されたりしているかもしれません。そうした影響を捉えられる指標もあわせて定義しておくことが大切です。
納得したうえでの選択肢を残す
デフォルト設定、リマインダー、意図的なフ
