プロダクトチームは、レポート共有を「レポートを作成し、同僚を招待し、フィードバックを受け取る」というシンプルな流れだと捉えがちです。しかし、実際の行動ログを見ると、他の誰かに共有される前にファイルをエクスポートしたり、設定画面に戻ったり、同じレポートを複製したりと、はるかに複雑な道のりをたどっていることがわかります。そうしたギャップは、共有ボタンが何回クリックされたかを数えるよりも、はるかに多くの示唆を与えてくれます。
行動分析(プロダクトアナリティクス)は、プロダクト内で記録されたユーザーのアクションを分析し、利用パターンを把握するための手法です。一般的にはイベント、タイムスタンプ、関連するユーザーやアカウントのプロパティを扱い、ユーザージャーニー、プロダクトの定着(アダプション)、リテンション、グループ間の差異などの分析を支えます。ウェブ解析と重なる部分も多く、イベントデータや再訪ユーザーの分析はどちらか一方だけの専売特許ではありません。
意味のあるアクションに絞ってイベントを定義する
「レポート共有」というイベントひとつをとっても、ダイアログを開いたのか、招待を送信したのか、あるいはアクセス権の付与が完了したのかで意味が異なります。これらはすべて別々のタイミングです。トラッキングを実装・活用する関係者間で定義をすり合わせ、イベントが意図したタイミングで発火しているかを検証しましょう。
問いに応じた適切な分析単位を選ぶことも重要です。コラボレーションツールでは、管理者がアクセス権限を設定し、別の同僚がコアな作業を行うことがあります。個々のユーザーだけを見ていると、アカウント全体としては目的を達成しているにもかかわらず、どちらのジャーニーも「未完了」と判定してしまう恐れがあります。分析のプロセス全体を通して、ユーザー、アカウント、セッションの違いを明確に区別しておきましょう。
Amplitudeによるプロダクトアナリティクスの概要では、ファネル、リテンション、パス分析といった一般的なアプローチが紹介されています。どれを選ぶかは問い次第です。ファネルは定義された順序を検証するのに適しており、コホート分析は時間の経過に伴うグループ間の比較に役立ちます。
行動の理由を決めつける前に、データを精査する
イベントの連続性に途切れがある場合、離脱だけでなく、想定内の別のルートを通った可能性や、トラッキングの欠落も考えられます。ある機能を一度も使わないユーザーがいるとしても、必要がないのか、権限がないのか、あるいは別の場所で同様の作業を行っているのかはわかりません。イベントデータは調査の範囲を絞り込むことはできても、その理由まで特定してくれるわけではありません。
特異なトレンドを解釈する前に、トラッキング仕様の変更、重複イベント、ユーザーIDの不整合などがないか確認してください。記録されたデータが全ユーザーを網羅していると思い込まず、そのカバレッジ(カバー範囲)を正確に把握することが大切です。また、データの収集は調査に必要な範囲にとどめ、アクセスや保持期間を適切に管理する必要があります。
データで見えたパターンから、実際の体験へと深掘りする
ファネル分析で権限設定のステップでの離脱が見られたら、対象となるユーザー層にリサーチを行い、そこで何が起きているかを調査できます。文言のわかりにくさが原因かもしれませんし、社内承認のルールやセキュリティへの懸念かもしれません。これらはチャート上では同じ離脱に見えても、取るべき対策はまったく異なります。
同様に、リテンションと相関する行動はアクティベーション指標の候補にはなりますが、そのアクションを促せば定着率が上がるという証明にはなりません。もともとプロダクトへの関心が高いユーザーほど、そのアクションを行う傾向があるだけかもしれないからです。
行動データを最大限に活かすには、手順を踏んだ一連の問いが欠かせません。まず計測データの信頼性を確かめ、パターンを見出し、考えられる仮説を検証したうえで、施策の効果を評価します。ユーザーインタビューを行えば、イベントログだけでは記録しきれない文脈を補うことができます。
