機能が2つ欠けているだけでも、ユーザーの反応はまったく異なる場合があります。片方は「そもそもこのプロダクトは使い物になるのか」と疑わせる一方で、もう片方は誰かにその可能性を教えてもらうまで気づかれもしません。狩野モデル(カノモデル)は、そうした違いを捉え、機能の有無と満足度を結びつけて整理するのに役立ちます。
このモデルでは、機能を「当たり前品質(基本機能)」「一元的一元品質(パフォーマンス機能)」「魅力的品質」などに分類します。当たり前品質は、使えなくなって初めて不満が出るような前提の機能です。パフォーマンス機能は、充足されるほど満足度が高まる傾向があります。魅力的品質は、なくても不満にはならないものの、あればユーザーを喜ばせることができる要素です。さらに「無関心」や「逆品質」といった分類もあり、あってもなくても変わらない機能や、かえって歓迎されない機能も捉えられます。クアルトリクスによる狩野モデルの解説では、こうした関係性を探るための対となる質問設計が紹介されています。
「ある場合」と「ない場合」の両方を尋ねる
狩野モデルのアンケートでは、ある機能が存在する場合にどう感じるか、そして存在しない場合にどう感じるかを尋ねます。この回答の組み合わせから分類を導き出します。これは単に重要度を評価してもらうのとは異なり、機能の性質をより深く捉えられます(もちろん、重要度の質問も補足的なコンテキストとして役立ちます)。
対象となる機能は、具体的に説明する必要があります。「優れたセキュリティ」では曖昧すぎて、何を評価すべきかわかりません。「サインイン時に2段階認証を必須にする」といった具体的な機能であればイメージしやすくなりますが、それでも利用シーンなどの丁寧な説明は欠かせません。事前にパイロットテストを実施しておくと、想定したユーザーにとって質問の意図が正しく伝わるか確認できます。
たとえばコラボレーションツールの調査では、会議の自動要約機能に対して、魅力的だと感じるグループがいる一方で、機密性の高い会話が記録されることを懸念するグループもいるかもしれません。双方の回答をひとつのラベルにまとめてしまうと、「ユーザーによって機能の持つ意味がまったく異なる」という最も重要な気づきを見落とすことになります。
分類を活かして意思決定を深める
狩野モデルのカテゴリは、機能にずっと固定される性質のものではありません。ユーザーがサービスに慣れたり、代替手段が登場したりすることで、期待値は変化します。また、対象ユーザーや表現の仕方、提供する機能のバージョンによっても左右されます。そのため、最多のカテゴリだけを取り上げて全員の総意であるかのように見せるのではなく、回答の分布やグループ間の意味ある違いをレポートすることが大切です。
このモデルだけで開発工数や事業価値、許容できるリスクのレベルが決まるわけではありません。また、「当たり前品質」に分類されたからといって、それ以上の投資が無駄になるとは限りません。ユーザーが「十分満たされている」と思い込んでいる場合でも、信頼性やアクセシビリティのさらなる改善が必要なケースはあります。
機能の優先順位づけにおいて、狩野モデルは、一見地味な改善になぜ取り組むべきなのか、あるいは魅力的な追加機能に対してなぜさらにコンセプトテストを重ねる価値があるのかを説明するのに役立ちます。満足度という指標に一段深い視点を与え、チームがこれから下すべき実践的な判断へとつなげてくれます。
