アンケートでは新規顧客が初期設定(セットアップ)を低く評価している一方で、インタビューでは同僚によるアクセス承認待ちが原因の一部であることが判明したとします。チームがこれらを結びつけることで、インサイトはさらに実用的なものになります。承認待ちの遅延に直面しているのは誰か、それが体験にどう影響しているか、そしてUIの使いにくさとこの問題を切り分けるにはどのようなデータが必要か、といった点が見えてくるからです。
混合研究法(ミックスメソッド)とは、ひとつの調査や一連のリサーチプロジェクトの中で、定性・定量のアプローチを意図的に統合する手法です。この統合は、対象者の選定、調査設計、分析、あるいは解釈のいずれの段階でも行われます。単に2つの手法を並行して実施しても、それぞれの結果が意味ある形で相互に補完し合わなければ十分とは言えません。
データをどう結びつけるかを決める
測定すべき顧客体験がまだ定まっていない段階では、定性調査から着手するのが有効です。インタビューを通じて初期設定における固有の障壁や、顧客がそれらを説明する際に使う言葉を特定し、その後に適切なサンプルを対象としたアンケートを設計してそれらの障壁を検証します。ただし、アンケートを実施するだけで自動的に全体像の出現率が証明されるわけではありません。対象者の選定と測定手法がその推論を裏づけている必要があります。
すでに数値的な傾向が見えており、その理由を解明したい場合は、調査の順序を逆にできます。完了率の異なるグループからインタビュー対象者を選定し、その差が生じた背景を探る形です。あるいは、両方の手法を同時に進め、分析の段階で比較・統合することも可能です。
米国国立衛生研究所(NIH)の行動・社会科学研究部門による混合研究法ガイドラインでは、目的を持った統合の原則が示されています。そこで説かれている手法のポイントはプロダクト開発にも応用できます。それぞれの調査単体では解明できない何を、データを組み合わせることで理解できるようにするのかを、あらかじめ明確にしておくことです。
調査設計のなかに連携を組み込む
先ほどの初期設定の例で言えば、アンケート回答者をインタビューに招待できるか、どのような同意が必要か、回答データをどのように紐づけるかを事前に計画しておきます。2つ目の調査で異なる対象者層を設定する場合は、その違いを明記しておきましょう。実際には結びついていない個別の事象が、ひとつのストーリーとして混同されるのを防ぐためです。
どちらのデータも適切な手法で分析する必要があります。都合のよい発言をいくつか拾い上げるだけでは定性分析の代わりにはなりませんし、探索的なインタビューのレポートにパーセンテージが記載されているからといって、代表性のあるアンケートとして扱うべきではありません。
エビデンスマトリクスを活用すれば、手法をまたいで主張や裏づけとなるファクト、意見の不一致を比較しやすくなります。その価値は、単にグラフと発言を並べることではなく、思考のプロセスを可視化できる点にあります。
意味のある「矛盾」はそのまま残す
顧客が総合的には高い評価をつけながらも、初期設定の手順は大変だったと語ることがあります。だからといって、どちらかのデータが間違っているとは限りません。最終的な成果に十分な価値を感じているため、最初の面倒な作業を受け入れている可能性があるからです。一見矛盾しているように思える結果の意味を判断する前に、質問内容や調査のタイミング、対象者層を改めて確認しましょう。
トライアンギュレーション(複眼的な検証)はそうした比較を整理するのに役立ちますが、結果が一致したからといって因果関係が証明されるわけではありませんし、不一致だからといって調査手法に問題があるとは限りません。どちらも顧客体験の解像度を高める貴重な手がかりとなります。
下すべき意思決定と、チームで使える専門スキルに見合った調査規模を定めましょう。結果が出るのが遅すぎて相互に影響を与え合えない複数のリサーチを散発的に行うよりも、明確な統合プランを持った小規模な調査のほうが、より多くの示唆を与えてくれます。最終的なレポートでは、エビデンスを組み合わせたことで何が新しくわかったのかを明確に示すことが大切です。
