「平均的な顧客」を想定したデザインは、思いのほか難しいものです。たまに使うライトユーザーは選択肢を減らしたいと考え、専門知識を持つユーザーは細かなコントロールを求め、管理者は全体を見渡せる統制を重視します。全員の意見を足して平均を取ると、誰のニーズも十分に満たせない、中途半端な体験になってしまいかねません。
セグメンテーションとは、特定の意思決定に関わる違いに基づいて、対象となる人々をグループに分けることです。その違いは、行動、ニーズ、置かれている状況、購買の仕組みなど多岐にわたります。幅広いユーザー層に関するニールセン・ノーマン・グループの解説でも、多くの人に向けたプロダクトであっても、個々のユーザーやタスクの違いを理解することがなぜ重要なのかが示されています。
意味のある違いを生み出す「切り口」を選ぶ
人口統計(デモグラフィック)や企業の属性は、グループの特徴を捉えてアプローチするための実用的な手段になりますが、それだけでニーズまで説明できるわけではありません。同じ年齢の2人でも特定のタスクに対する習熟度が大きく異なることもあれば、同じ規模の組織でもソフトウェアの導入プロセスがまったく異なることもあります。
旅行プランニングを例に挙げると、いつもの出張ルートを予約する人と、複雑な家族旅行を手配する人とでは、求められる体験が異なります。同じ人物が、シチュエーションによってどちらのグループにもなり得るのです。このことから、セグメンテーションの単位は、個人に固定された属性ではなく、「状況」や「カスタマージャーニー」そのものである場合があることがわかります。
データを集める前に、セグメンテーションをどのような意思決定に活かしたいのかを決めておきましょう。業務フローを改善するための調査と、マーケティングのターゲットを決めるための調査とでは、必要となる切り口が異なります。ひとつのセグメンテーションであらゆる目的をカバーしようとすると、焦点がぼやけてしまい、どれにとっても役に立たなくなってしまいます。
グループを定義し、検証する
管理者と一般メンバーのように、あらかじめ定義されるセグメントもあれば、定性分析や統計モデリングを通じて浮かび上がってくるセグメントもあります。いずれの場合も、そのグループ分けが意味のある違いを捉えているか、十分な根拠に裏打ちされているか、そして新しいユーザーを適切に分類できるかをしっかりと検証することが大切です。
クラスタリングモデルは設定した前提に基づいて構造を導き出しますが、その結果を解釈し、妥当性を確認する作業は欠かせません。データがわずかに変わっただけでグループ分けが大きく崩れてしまうようでは、いくら魅力的な名前をつけたところで意味がありません。同様に、限られた層へのインタビューだけでは、市場全体における各セグメントの規模までは把握できません。
ペルソナは、セグメントの背景にあるリサーチ結果をチームに共有するのに役立ちます。ただし、架空のステレオタイプに落とし込むのではなく、根拠となる事実や多様性を残すことが大切です。状況に応じて、デモグラフィック調査を組み合わせることで、さらにコンテキストを補強できます。
有用なセグメンテーションは、具体的なアクションにつながります。誰をリクルーティングすべきか、どのニーズを深掘りすべきか、あるいは特定の状況をどう支援すべきかといった判断を変える力を持っています。プロダクトやユーザー層の変化に合わせて、その違いが現在も有効かどうかを定期的に見直しましょう。セグメントはユーザー像を捉えるための仮説であり、そこに属する人々を縛る絶対的なラベルではないのです。
