解約の手続き自体をカウントするのは簡単ですが、離脱のきっかけはずっと前に始まっていたのかもしれません。あるチームが特定の機能を使わなくなったり、推進役だった担当者が転職したり、他の予算との兼ね合いで更新の正当化が難しくなったり——。チャーン分析(解約分析)は、最後のアカウント停止という事象の先を見据え、誰が、いつ、どのような状況で離れていくのかを解き明かすためのアプローチです。
この言葉は、プロダクトの利用や支払いをやめたユーザーを分析することを指します。Amplitudeのチャーン分析ガイドにあるように、行動ログを追うことで、解約や非アクティブ化の前後に見られるパターンを特定しやすくなります。そうしたパターンは、ユーザーが語る「何が変わったのか」という生の声と結びつくことで、より真価を発揮します。
何を「離脱」とみなすかを定義する
サブスクリプションの解約、契約満了、そして60日間アクセスがない状態は、それぞれ異なる事象です。プロダクトの特性に合った定義を選び、比較の際もその基準を一貫させましょう。たまにしか使われないサービスなら、1か月動きがなくてもごく普通のことですが、日常的に使う仕事用ツールであれば、すぐにでも原因を探るべきサインになります。
また、ユーザーベースのチャーン(カスタマーチャーン)と収益ベースのチャーン(レベニューチャーン)では、見えてくる課題が異なります。小口のアカウントが複数解約されるとユーザー数の上では大きなインパクトに見えますが、収益面では大口の1アカウントを失うほうがはるかに打撃となります。集計期間、分母の取り方、新規顧客や復帰ユーザー、ダウングレードをどう扱うかを明確にしておきましょう。見慣れた指標名であっても、2つのダッシュボードが全く同じ計算をしているとは限りません。
プロダクトとの関係性において、同等のステージにあるコホート同士を比較しましょう。獲得したばかりのユーザーはまだ年次更新を迎えていないため、その時点でのリテンション率を、1年間使い続けたグループの実績とそのまま並べて比べることはできません。
原因を決めつけずに、一連の流れをたどる
たとえば、解約したアカウントの多くがレポート機能をほとんど使っていなかったという分析結果が出たとします。つい、その機能をもっと使うようリマインドを送りたくなるところですが、利用頻度の低さはもっと根本的なズレの結果かもしれません。そもそも、そうした顧客にはそのレポート機能が前提とする業務フロー自体が存在しなかった可能性もあります。
離脱した顧客へのインタビューやアカウントの利用履歴、サポートへの問い合わせ記録などを突き合わせることで、本当の理由が見えてきます。同時に、使い続けてくれている顧客にも話を聞いてみてください。解約した人と同じ課題を抱えながら、利用を続けているケースもあるからです。解約時のアンケートフォームはきっかけにはなりますが、そこで選ばれた1つの理由は、何ヶ月にもわたる複雑な事情を都合のよい選択肢に押し込めたものに過ぎないこともあります。
改善のための施策を打つ場合は、「関連性が見つかった=解決策がわかった」と思い込まず、それが本当に結果につながるかをテストしましょう。ビジネス上の緊急度が高い局面であっても、相関関係と因果関係は別物です。
離脱の中には、目的をすでに達成した、事業をたたんだ、あるいはプロダクト側ではどうしても対応できない変化が起きたなど、自然なものもあります。有意義なチャーン分析とは、そうしたケースと「防げたはずの失敗」を切り分け、顧客にとってもビジネスにとってもプラスになる打ち手をチームが見極められるようにすることです。
