空のテキストボックスがあると、アンケートに余裕があるように感じられることがあります。用意された選択肢ではカバーしきれなかった思いを、ようやく自由に書ける場所だからです。しかし同時に、「その他、何かご意見はありますか?」という質問を前にして、どこから書き始めればいいか途方に暮れてしまうこともあります。回答の自由度を活かすには、それを使う理由と、ある程度の方向性が質問によって示されている必要があります。
自由記述式の質問(オープンクエスチョン)は、回答者が自分の言葉で答えを組み立てられるようにするものです。インタビューであればその回答から会話を広げられますが、アンケートでは意図を補足してくれる人がその場にいないため、質問文の言葉選びそのものがより重要な役割を果たします。
具体的に問いかける
「あなたの体験について教えてください」という聞き方はオープンではありますが、回答者にトピックの選定や詳細さのレベル、さらには明確に定まっていない時期の振り返りまで委ねてしまいます。「前回の業務で、チーム外の人とレポートを共有しようとしたときはどうでしたか?」といった問いかけであれば、結論を誘導することなく、書き出しのきっかけを与えられます。
この違いが重要なのは、オープンな問いであっても誘導尋問になり得るからです。「なぜダッシュボードがわかりにくいと感じましたか?」という聞き方は混乱があったことを前提としていますが、「ダッシュボードを使う中で、もし扱いづらい点があったとすれば、それはどのようなところでしたか?」と聞けば、回答者はその前提自体を否定できます。実際の出来事をリサーチする場合は、理由や解釈を求める前に、まず何が起きたのかを尋ねましょう。人は行動の動機を説明することよりも、起きた一連の出来事を振り返るほうがスムーズに言葉にできるものです。
ユーザーインタビューの場では、「そのあとどうなりましたか?」といった短いフォローを挟むことで、リサーチャー側の都合の良い解釈に誘導することなく、自然に話を進めてもらえます。アンケートであれば、1つのテキストボックスに複数の質問を詰め込むよりも、具体例を1つだけ挙げてもらうような簡潔な問いかけのほうが効果的です。
予期していなかった回答を受け止める余白を残す
自由記述は、ある行動の背景にある理由をチームがまだ把握しきれていないときに特に役立ちます。例えばサービスの解約理由を調べる際、用意された選択肢が価格、機能不足、パフォーマンスの低さだけだと、「単に顧客のプロジェクトが終了しただけ」という理由を見落としてしまうかもしれません。自由な記述があれば、誤解を招くようなグラフができあがる前に、そうした見落としに気づくことができます。
質問の順序も、得られる回答に影響します。あらかじめ提示された理由のリストを先に目にすると、回答者は後の自由記述でその言葉に引きずられてしまいがちです。ありのままの自然な言葉を引き出したいときは自由記述を先に置き、評価のスコアの背景を掘り下げることが目的であれば、評価の後に配置します。同じ入力欄を使う場合でも、これらはまったく異なるリサーチの目的を持っています。
集まる回答の扱い方をあらかじめ計画しておく
自由記述のテキストは、書く側にも解釈する側にも労力がかかります。自由記述の無回答に関するピュー・リサーチ・センターの分析では、質問の負荷の違いが回答率にどう影響するかを検証しています。入力欄が空欄だからといって、その人に言いたいことが何もないとは限りません。
自由記述の質問には常に明確な目的を持たせ、デリケートな詳細については必要に応じて任意回答にしておきましょう。回答を分析する際は、製品に対する不満なのか、それが使われた状況に対する不満なのかを区別できるよう、文脈を十分に残しておくことが大切です。両方を「不満」と大雑把にひとまとめにしてしまうと、整理はしやすいかもしれませんが、チームにとって実用的な示唆は得られなくなってしまいます。
特定のテーマがどのくらいの頻度で見られたかを報告する場合は、分母と回答のコーディング基準を明記してください。1つの回答の中に複数のテーマが含まれることもありますし、わざわざコメントを記入した人とスキップした人では傾向が異なる場合もあります。印象的な引用コメントは発見に説得力をもたらしますが、それ単体でその体験の普遍性を証明できるわけではありません。
